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 「この子はうんと長い血統書付きなのよ!」犬の飼い主が私の隣でうれしそうに大声で言いました。ほとんどの人達は妙な響きの名前が続き、またそのいくつかには赤い枠がついているあの長く、神秘的な書類をもっともらしく誇りに思います。それほど印象的に見えるこの書類はいったい何なのでしょう?それは本当は何を意味するのでしょうか。

 ごく単純に言えば、血統書とは、あなたの犬の先祖の記録です。父犬、母犬、祖父犬、祖母犬、曾祖父犬、曾祖母犬、そして4代までの。全ての生物、動物、植物あるいは人には家系(由来)というものがあります。誰かがそれを書き記したり、記録をたどる時に間違ってしまうことがあれば、その情報は記憶と時のかなたに消え去ってしまいます。

 アメリカン・ケネル・クラブ(AKC)をはじめ他の動物登録団体は、そうした家系の記録をつける為に組織されています。わずかな「登録料金」で、AKCはあなたの犬の名前と家系の情報を記録します。あなたが受け取る犬のAKC登録証明書は、その犬の情報がAKCの記録としてファイルに残されたという事を意味しています。また別の料金を払うと、AKCは血統書=登録されたあなたの犬の先祖の情報リスト=を交付します。
 AKCは、あなたの犬の名前、毛色、性別、血統、生年月日、繁殖者、オーナー、AKCの下で開かれたドッグショーや訓練競技会などで得たタイトルを記録してあります。登録の際、AKCは繁殖者やオーナーを信頼して業務を行っています。もしもあなたの犬の繁殖者がAKCに虚偽の申請をしても、その犬の血統書は書き改められることはないかもしれません。残念なことに、全ての個々の情報を正しいと立証することは難しいのです。あなたが個人的に良く知っているか、あるいはその繁殖者を信用する以外、あなたの犬が本当にその書類に記録されている通りであるかどうかを知ることはできないのです。

 血統書が「伝えていない事」こそが実はとても重要なのです!AKCの登録基準を満たす純血種であれば、どんな犬でも登録可能で「書類」をもらえるでしょう。その書類はその犬が良い質であるものか、またはそこに書かれている犬種にちゃんと見えるように成長するかどうかまでは伝えられないのです。書類が示していることは、その犬がAKCに登録されており、その記録がファイルされているということだけです。ほとんどの人がこの重要なポイントを誤解しています!実に多くの質の落ちる犬達がAKCに登録されているのです。登録書類や血統書を見ただけでその犬の質を判断することはできないのです。
 この事により、今あなたにわかることは、血統書は単にあなたの犬の先祖はどの犬達かということを伝えているに過ぎないという事です。その先祖犬達の質が良いものか,どのような外見かまでは伝えることができません。また,遺伝的に将来、気質的、身体的にも子孫に問題を残すかどうかまでは伝えられないものだとおわかりでしょう。
 もしもあなたの犬がペットとして、伴侶として良い存在であるのならば、その子の家族についてもっと調べようとは思わないかもしれません。もしも、あなたがその子をショーに出したり、繁殖に使おうと思っているならば、その子の家系をよく調べる事は大変重要です。その子の血統書にある先祖の名前を単に覚えるだけでなく、もっともっと調べねばならないでしょう。
 血統書に出てくる犬についてもっと知る為には、まずはあなたの犬の繁殖者を尋ねてその子の両親を見るべきです。繁殖者は、あなたの犬の祖父母犬がどこにいるかをも伝えられると思います。血統書の過去の犬の情報を得るには、その犬種についての本や雑誌に頼らざるを得ないかもしれません。今は亡き過去の犬達について知っているベテラン・ブリーダーを探すため、全国組織の犬種クラブに連絡をとってください。写真は過去の犬についての一部を語るだけです。その犬達が実際にどうであったかをよく知る人達と話す必要があります。

 CH.とは、何を意味するのでしょう?CH.は「チャンピオン」の略称で、みんなの心をちょっとばかりくすぐるタイトルですね。チャンピオンで埋め尽くされた血統書は、確かにとても印象的なものです。
 チャンピオンとは、そのタイトルを取るのに必要なポイントを得る為に公認ドッグショーで他の犬達を勝ち負かした犬です。犬種や地域によって負かすべき犬の数はまちまちです。ある犬種は、他の犬種よりもチャンピオンを取るのが容易なこともあります。
 チャンピオンとは、違った質の犬なのでしょうか?ある意味ではそうですが、必ずしもそうとも言えない場合もあります。チャンピオンとは、単にショーにもよるのです。ショーそのものの内容がさしたるものでないような地域では、同じくチャンピオンと言ってもその犬種の中ではちょっとばかり標準より上程度かもしれません。ショーの内容が充実しているような所では、もしかしたらその犬は、タイトルは取れなかったかもしれません。タイトルがついているからと言って、本当にそれに値するものかどうかまではわからないのです。(*)
 チャンピオンのタイトルは、その犬が繁殖に向くかどうか、遺伝的に良いものを持っているかどうかを示すこともできません。それが果たしてどうかという事については、その犬を知っている人から直接聞く以外にないのです。

 簡単に言うと血統書とは、繁殖者が良い犬を作ろうとする時の単なる「道具」です。それは調査の第一歩となるものです。血統書そのものはあまり意味はありません。血統書に記載されている犬が実際にどのようであるかがわからない以上、血統書は単に印象的な名前のリストにすぎません。

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 上記はアメリカ・チャウチャウ・クラブの福祉委員である Vicki DeGruy により書かれたものです。著者は、無償の目的であれば転載について許可を出しています。転載される場合は、一応ひとことお知らせください。

注釈:
 (*)AKC では、各犬種がチャンピオンになるために必要なメジャーポイント獲得の基準を地域ごとにショー参加の犬の数で決めています。
  この数はその犬種の登録数(人気度)で差があります。ドッグショーが盛んで参加犬数の多い所や人気があって参加数の多い犬種になると必要なポイントを得るためにショーで勝ちまかす犬の数が多くなり、それだけチャンピオンに競争率が高く、難しくなります。

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