この日、日本を経ってシカゴ経由でワシントンへ。(Ronald Regan)
前年はボルティモア郊外に当時いた知人のところにPCAの間中、居候していたのだが、今年は早めにショーサイト近辺(とは言え、車で20分ほど)の所に安宿を取っての宿泊。
今回の PCA は、実は「ついで」。帰りにシカゴの知人のところに寄って、仔犬を連れて日本に戻る、というのが目的のメインだったので、実は、旅行日程のプランは飛行機を予約するまでものすごく迷いました。
本当なら、この前週の土曜日にある hunting test が見たかった。日曜は休みで仕方がないけれど、月曜のアジリティ見学をやめて、隣の州(バージニア州)にある、取引先に見学かたがた行こうか、、とか、いろいろ。ところがそれをやってしまうと、前年、丸々10日も仕事を休んで大変だったというのに、もっと長く休まねばならなくなってしまう。というのも、どうせシカゴに寄るなら「ついで」に行きたい所、会いたい人もいたので2週間くらい考えないとならなかったのです。
考えた末に、やはり10日以上仕事を開けるのは困難と思い、泣く泣く、ハンティングテスト、アジリティ、セミナー、オビディエンスを諦めた。そのかわりと言ってはナンだけれど、着いたその日に、前から気になっていたトイのブリーダーを訪ねることにしました。
そのトイのブリーダーは、もともと、アディやティティの先祖犬のブリーダーです。20年前と今そこにいる犬達のタイプは少し変わってきてしまっているけれど、どんな感じなのか、どういう犬達が今いるのか、ちょうど半年前にアディが亡くなったこともあったので、実際に血縁となる犬達を見てみたい、という思いが強くありました。
PCA に行くと決めた時に、直接そのブリーダーに手紙を書きました。今すぐにトイを飼うことはできないが、以前、そちらの血縁犬がいたこともあるので、構わなければ一度伺いたい、とりあえず、PCA に行く前に電話をするのでよろしく、というようなものだったけれど。
実は、やはり直接会ったこともない人、しかも一応、トイの世界ではそこそこ名の知れた有名犬舎なのでちょっとは気が引けるというか、相手がどういう反応なのか、興味半分、かつ、不安もあったりするのは事実。出る前に、シカゴのブリーダー(今回、仔犬を譲ってもらうところ)に電話をして「実は、どこそこの何々というトイのブリーダーの所にこういう訳で訪ねて行きたいのだが、その人のこと、知っている?」というふうに聞いてみた。なんと世間が狭くて、知っているどころか間接的にいろいろつながりがあった上、法的には今回連れて帰る予定の仔犬の co-breeder と親戚関係になるという。これはある意味、本当に渡りをつけるにはラッキーかもしれないと感じたのだけれど、電話の向こうからは正直、あまりいい話は聞こえてこなかったのです。
「どこそこはよく知っている。でも、果たして彼女の犬の扱いがいいかどうか、犬達の状態がいいのか、、、、正直いい印象がない。もし本当にそこからトイが欲しいというのなら、本人ではなくてフロリダにいる娘に話をして探したほうがまだいいと思う」
そんなこんなでちょっとばかりの不安を感じつつも、12日午後、無事にワシントンに到着。
すでに日本を発つ前に例のトイのブリーダーには、12日の夕方にでも行きたいということ、ホテルに着いたらまた連絡することを伝えてあった。
2年ぶりにワシントンから Waldorf に向かったが、道を間違えることもなく、まずは無事にホテル着。着いてみてうれしかったのは、なんとローカルコールがタダだったということで、早々に仕事のこともあるので、メールチェックとメール送信。時差はあるけれど、インターネットのおかげで本当に世の中便利になった。いや、異国に来てまで、仕事が離れないと言うべきか?
早々にトイのブリーダーに電話をして、ホテルからの行き方を聞く。時間があったので急いで今ショーサイトに行けば、まだオビディエンスをやっているような時間で、たぶん行けば知りあいが数名いるだろうとは思ったけれど、さすがに長時間の飛行機移動で疲れたので、近くのスーパーまで夕食になるものを買いに出ただけで1時間ほど休むことにしました。
夕方6時くらいになって、これからホテルを出るからと、トイのブリーダーに連絡。地図でだいたいの場所を確認して教えてもらった通りに、すぐに到着した。アメリカで本当に毎度感心するのは、住所さえわかればまずだいたいは目的地に到着できる、ということ。もっとも、この「思い込み」がその後シカゴ郊外で裏切られるのだけれど。(苦笑)
トイのブリーダーの家は、林の中でした。到着した頃、すでに周囲は薄暗くなっていました。
リビングには年寄りのシーズーと、4歳というのにまるで仔犬のように小さなトイ(いわゆるティーカップサイズって感じ)、それからやはり年寄りのポメラニアンがいるだけで、あれ?他の犬達はどこにいるんだろう?と思っていました。
ここのブリーダーの犬は何頭か日本に行っていたりするので、誰それを知っているとか、これは誰それからもらった物だとか、、こちらも仔犬を買いに来たわけではないので、なんだか話のとっかかりを見つけづらいような雰囲気がちょっとしたのも事実です。小さなトイがおもちゃを持ちだして来たので、投げて遊んだりしていると、犬を見せるからこっちに来い、と言うのでついて行きました。リビングの奥のダイニングを抜けると、すぐ裏に犬舎が別棟という形になってありました。
案内されるままに犬舎に入ってビックリ! 臭い!! 悪いけれどめったにありませんよ、あんな臭い所。例えて言うなら、うんと管理の悪い安ペットショップ並。いや、それよりも臭いかも。。。それから、うるさい。人が入ってきた、というのでいる子達が一斉に吠えたてる。まぁ、ある程度これは仕方がない部分もあるのでまだいいんですけど、臭いだけは本当に耐えられるものではなく、よくこの人平気だな、慣れって恐ろしいもんだ、と思ってしまいました。
犬舎に入ってすぐの部屋には、ショーに出している子、これからショーに出る子達がケージの中に収まっていました。その中から2頭ほどテーブルの上に乗せて見せてくれたのですが、そんなことよりこちらは臭くて鼻で息ができなかった。。。壁には、チャンピオンになった犬達のショーでの写真がいくつも飾られています。アディやティティの直の先祖犬(懐かしい)の写真も。
その部屋の向こう側にも二つ部屋がありました。2番目の部屋は、お産をした母犬と仔犬達。ちょうど3頭が仔犬を抱えていて、そのうちの2胎はあと1月するかしないかで新しいオーナーのところに行くか、残るかなのでしょう。仔犬も2,3取りだして「この子は色素がすごくいい」とか「これはショーに出せるタイプだ」と見せてくれたのですが、ここも臭い。。なんせサークルの中で仔犬と一緒に親犬もここでトイレをそのまましているので、なんとも言い難い臭いなのです。ここと、一番奥の部屋には窓がなく、閉めきったままなので最悪でした。
仔犬達の隣、一番奥にはまだ犬達がケージに入って10頭くらいいました。繁殖に使っていない年のいった子もいます。ここも強烈な臭い。(呆)
ブリーダーは、サークルやケージから犬達を一頭ずつ「つまみ出す」と、戸を開けて裏庭のランに出し始めました。本当に文字通り犬達を「つまみ出す」のです。正直、こういう手荒な扱いにもちょっと驚きました。犬をつまみ出しながら、サークルの下に敷いている紙を取り換えていきます。私もなんだかなぁ、と思いながら、犬出しとトイレの始末を手伝いはじめました。
そんな中に、14歳という年寄りのかわいい子がいました。見ると腰が立たなくなっていて、手を出すと下半身を引きずるようにして狭いサークルの中をかろうじて移動していました。この子はどうするの?(外に出すのかどうか)と聞くと「その犬はほうっておいていいよ」という返事。こんな子を犬部屋にずっと閉じこめているの? もうビックリです。
ここの部屋はラジオがずっとつけっぱなしで、たぶん一日に2,3度こうしてランに放してもらう時や食事の時以外は、ほとんど人と接することもないのではないか、と思いました。とても十分なケアがされていないと思います。特にあの腰の立たない子。本当ならば手元に置いてケアしてやらねばならないだろうに、、、そう思って片づけを手伝っているうちに、なんだかこちらはあまりに悲しくて涙がでてきてしまったほどです。犬達の扱い方といい、なんといい、ちょっとひどすぎる。。。ショーで有名だったり、日本に犬を売ったりして、いろいろとご自慢話もしていたけれど、そんなことよりももっと犬を大事にしろ、こんな扱いして何がチャンピオンだ、何がトッププロデューサーだ、、、と言いたくなりました。腹立たしさと悲しさだけで、早々に聞きたいことの半分も聞かずに、疲れているからまた、と言って、その後、ランの犬達を全部戻すまで手伝ってから、逃げるように私はホテルに戻ってしまったのです。(私は最後まで臭いに慣れず、犬舎を出るまで鼻で息ができませんでした。だって、吐き気がしたほどなのですから)
正直、行かなければよかった、見なければよかった、と、後悔ばかり。あの腰の立たない子、できるのであれば本当に盗んできたかった。年寄りをあんな風に扱うなんて、何を考えているんだか。。。あなたの今があるのも、あぁいう子達のおかげでしょう?
後日、PCA のショーサイトでベッツィーに会うと「トイを見に行くって言っていたけど、どうしたの?」と聞かれて、実はひどくてガッカリした、という話をしました。「いったいどこのブリーダー?」と聞くから、名前を言ったら「あぁ、よくわかるわ。そんなもんでしょう」
シカゴの友人だけでなく、地元でもこういう点で評判が芳しくないんだ、やっぱりね。。。とても残念だけれど、私はもう二度とあそことはコンタクトなんか取らない。どんなに犬が良くても欲しいとも思わない。ブリーダーの所からサヨナラする時に「PCA のショーサイトで見かけたら声かけてね」って言われたけど、その後、近寄りもしませんでしたよ。私のことも忘れてちょうだい、って感じ。ショーや繁殖で第一線で活躍したり有名だからといって、ブリーダーとしての人柄、犬への接し方も良くて全てが一流とは限らない、といういい見本を見せてもらったと思う以外にありませんでした。実に残念なことです。
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