菜々子のブロート・ヒストリー2

2003年9月、4回目のブロートの際に胃固定手術を受けた菜々子のその後です。

2005年夏
 手術後の菜々子はその後、ブロートも起さずに健康状態は安定していました。手術から2年ちかくが経ち、ブロートなどお互いに忘れかけていた夏、突然事務所でブロートを起しました。
 幸いなことに昼間。歩いても2分という距離に動物病院があるため、すぐに電話をして菜々子を担ぎ込みました。(歩いて行くのは無理なので車で)この時は口からチューブを入れてガスを抜き、胃洗浄をして特に問題はありませんでした。
 胃固定手術をしてもガスが溜まる「胃拡張」は起こりえるのは知識としてわかっていましたが、2年も無事だったところに何が原因かもわからず、この時はややショックでした。それでも簡単な処置で本人はその後ケロっとしていました。

2006年3月
 この日は千葉の知りあいの店で OptiGen 20/20 clinic を開催するため、菜々子を連れて千葉まで来ていました。当初菜々子は置いて行こうかと思ったのですが、トイレの心配もあって犬達3頭と留守番をするダンナがまた大変だと根をあげそうだったため、急遽菜々子を車に積み込んでの外出です。
 実は朝予定よりも寝坊をしてしまったために、菜々子に食べさせてから出かける余裕がありませんでした。いつものフードを持ち、知りあいの店にバリケンを持ち込んでその中で菜々子に食べてもらおうとフードと一緒に入れて置いていました。この時、いつもならすぐに食べるのにほとんど食べようとせずにいたので、食欲がないのはちょっと変だな、と思ったことを覚えています。

 バタバタとしていた20/20 clinic も無事に終わり、荷物を詰め込んで最後に菜々子を車に乗せようと見たら、フードは結局食べずに残していました。バリケンを車に積んで、菜々子を乗せようとした時に異変が起こりました。なんと、またブロートです。これで術後2度目、通算7度目!
 幸いなことに採血と簡単な健康診断をしてもらうため、知り合いの獣医師が一緒にいました。しかも、同じくブロートリスクを抱えているアイリッシュ・ウルフハウンドのオーナーで、ブロートについては詳しい先生です。
 私もブロート慣れ(?)気味だったし、一緒にいるの獣医師だからと、7度目のブロートでも慌てることなく逆に「大丈夫だろう」と妙な安心感すらありました。

 ところが、ガス抜きをしようとその場にあったホース(苦笑/他に使える物がなかった)を突っ込んでも思うように胃に入らないだけでなく、菜々子も極度に嫌がってうまくいきません。しかも、歯茎の色が良くないのです。
 これはまずい、と思い、近くの病院を教えてもらって担ぎ込むことにしました。余談ですが、この時に一番役立ったのがカーナビ。知らない土地で、比較的近いにしても地図で確認することなく住所さえ入力してセットすれば、そのまま道案内をしてくれるカーナビは心強かったです。

 車で10分ほどで病院に到着。そこで少し待たされましたが、それでも今まで菜々子は無事だったし胃固定手術もしているからと、私は不思議なくらいに安心していました。ところが、レントゲンを見てびっくり! なんと固定したはずの胃が外れて今回は完全に捻転してしまっていたのです。菜々子を救える唯一の手段は、再手術しかありません。こうして菜々子は、15歳という高齢で再び胃固定手術をすることになってしまいました。フラップが外れて捻転していたのは、ちょっとショックでした。一緒にいた獣医さんも同じ手術を自分の子で経験しているので不安だと言っていました。
 この時の手術では胃捻転により脾臓もダメージを受けていたため、脾臓摘出というオマケつきでした。

教訓:胃固定をしても、その後のブロートで固定したフラップが外れて捻転することがある。
   胃固定手術をしていても、ブロートを起したら必ずレントゲンで確認すること!

2006年6月
 3月の再手術から回復して、普段通りに特に問題なく生活していたのに昼間、また突然事務所でブロートを起しました。8度目です。もうこの頃には、ほんのちょっとした菜々子の異変で「これはブロートだ」と私は予測することができるほどでした。再び事務所から一番近い病院に連れて行ってガス抜き。大丈夫だろうとは思いましたが、念のためレントゲンを撮って胃の状態を確認。
 この後、菜々子はこの年の7月末に亡くなるまでブロートを起さずに過ごしました。それにしても8度もやって2度も手術しなくてもいいのに。(泣)

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 菜々子の例は極端かもしれませんが、一度ブロートを起したら2度、3度とあり得ることを覚悟して素早く対応ができるように普段から気をつけていてください。多くの場合、原因はわかりません。度重なるブロートで食事の与え方、内容など、私なりにできる限りのことをしていたつもりですが、それでも防げませんでした。

 AKC Gazette 2007年8月号に、ブロートについて記事があります。特に目新しい内容ではないのですが、ドライフードとの関連性については明確なものがないけれど、ドライフード「のみ」を与えられている犬はリスクが高い、とあります。ドライフードが悪いというのではなく、缶詰を混ぜるだけでもよいので、ドライフード以外のものも与えるとリスクが減るとあります。また、生食(raw food)がリスクを減らすという根拠は残念ながらないようです。

 もし、何をどう与えるかを考えるのであれば、1)ドライフードだけの食事にはせず、もしドライフードを使うならば缶詰などを混ぜる 2)一日量を一度に与えず、数度に分けて与える という方法になるかと思います。
 また、できれば食事は消化の良いものを与えることが良いでしょう。菜々子の場合、消化機能が低下していたということもあったかもしれませんが、過去チューブを使ってのガス抜きの時に生で与えていた野菜くずやグリーニーズのカケラが消化しきれずにチューブで詰まってしまったという経験があります。

 いずれにしても、こうやっていても菜々子のように度々起すケースがあるので、一度起した子、もしくは高齢の子は予防も大事ですが万一の場合の対応、特にまず変化に気付くことができるかどうかが大切ではないかと思います。

 菜々子のケースは加齢に伴うものが一番大きいかと考えていますが(最初のブロートが11歳)スタンダード・プードルで若くでブロートを起すケースは遺伝的要因がかなり強いと思われますし(これはハイリスク犬種でも同じ)数々の研究やブリーダー達の話を聞いても遺伝の問題であることは明らかでしょう。それ故に、ブロートを起した犬自身は繁殖には用いないでもらいたいし、一親等内でブロートを起した血統は要注意。自身がブロートを起していなくても、その子供が複数起していたら繁殖はそこで止めてもらいたいと思います。特にこの数年、1歳〜3,4歳という若年齢でスタンダード・プードルがブロートを起している話を複数聞くので、繁殖を考えている方々は、ぜひ親戚縁者も含めて血統調査をして慎重に繁殖を行ってほしいと思います。もし1歳とか2歳という若い年齢でブロートを起されたとしたら、その後10年以上爆弾を抱えて生活するような恐ろしさがあります。私なら考えたくないことです。

 ブロートを起した犬は、苦しみます。処置が間に合わなければ苦しい思いをして死に至ります。パーデュー大学のグリックマン博士は「ある犬種においては、他の何よりもブロートが原因で死に至るケースが多い」とAKC Gazette の記事内で言っています。また、彼のグループによる研究論文の結論では「ブロートを起こした犬の一親等内の血縁の犬を繁殖プログラムから外すだけでおよそ6割はブロートを減らせることになるだろう」とあります。スタンダード・プードルの死因トップがブロートにならないことを願うばかりです。

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