スタンダード・プードルにおける発作を伴う新生児脳症
Neonatal Encephalopathy with Seizures (NEwS)
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 2006年、ミズーリ大学獣医学部で、スタンダード・プードルの新生児脳症の遺伝子検査が開発されました。以下の文章は、許可を得てサイト内情報を和訳したものです。(一部編集)
 オリジナルは、こちらです。

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 AKC Canine Health Foundation, Poodle Club of America, St. Joseph Missouri Kennel Club、スタンダード・プードルのオーナー達の支援を受けて、ミズーリ・コロンビア大学の研究員達(Dennis O'Brien, DVM. PhD, Gary Johnson, DVM and Liz Hansen BS)は、広範囲にわたるスタンダード・プードルの血縁内で今まで解明されていなかった致死の発達脳疾患を調査していました。その病気は常染色体劣性遺伝で、この病気に冒された子犬のほとんどは出生して間もなく死に至ります。集中的な看護で、2、3週の間は生きていていられることもありますが5週め過ぎまで生き残ることはできませんでした。
 研究チームはこの病気の位置を特定し、変異遺伝子と病気を引き起こす突然変異を確認し、ノーマル、キャリア、アフェクティッドを識別するDNA検査を2006年3月に考案し、検査を提供しています。

リサーチが始まったきっかけ
 1997年、我々は歩行困難で発作を起す生後5週齢のスタンダード・プードルの子犬2頭を診察しました。他の同じ腹の兄弟姉妹は普通に成長していました。発作に対する通常の処置はうまくいかず、病気に冒された子犬は安楽死の処置となりました。その後、14胎以上に全く同じ症状を見せた子犬がいることがアメリカ国内において、脳神経科の獣医師により確認されました。

新生児脳症とは?
 新生児(neonatal)とは、出生直後の子のことをさし、脳症(Encephalopathy)とは脳を影響を及ぼす病気のことを言います。つまり、新生児脳症は、子犬が生まれるとすぐに明らかになる脳の病気のことを意味します。この病気に冒された子犬は産まれた時から弱く、動きがぎこちなかったり、ぼんやりとしていたりします。そんな子犬が最初の数日を生き得ることができれば、普通に成長します。しかしながら、そんな子犬も同じ兄妹姉妹の中で強い子には負けてしまったり、成長が遅かったりすることがあるかもしれません。中には全く立てなくなる子犬もいます。なんとか頑張って立ち上がって、ぎこちない動作で度々転びながらもかろうじて歩く子犬もいます。生後4〜5週までに、ほとんどの子犬に発作がみられるようになります。薬剤でこの発作をコントロールすることは全くできず、離乳期前までには死んでしまうか、あるいは安楽死の処置を施さねばならなくなります。

 こうした子犬の検死解剖が行われました。最初の解剖では脳の変化はみつかりませんでしたが、最近の解剖では運動調整をつかさどる脳(小脳)のタンパク組織と、発作を引き起こしているであろうと思われる脳の部位(大脳)に変化がみられました。

他に似ている病気は?
 若い犬の脳疾患のいくつかは似た症状を呈することがあるので、全ての「変な動きをする子犬」をこの特異的な疾患と混同しないようにすることが重要です。うまく授乳できなくて低血糖を起した子犬や、先天的に血糖調整機能に問題を抱えている子犬は、活気がなく、発作を起すことがあります。子犬がこのような症状を見せた時、定期的な血液検査をすれば低血糖かどうかがわかります。肝シャントは行動の変化、協調運動障害と、時に発作を引き起こすことがあります。肝機能障害は適切な血液検査ではっきりしますし、シャントは検死解剖で明らかになるでしょう。水頭症や他の先天性脳奇形も新生児脳症と似た兆候を表しますが、そのような問題が原因の場合は検死解剖ですぐに明らかになります。子宮内での感染、あるいは生後すぐの感染症も脳に障害をもたらしますが、その場合は通常一胎児全ての子犬が発症するもので、このような場合、検死解剖で脳感染が明らかになるでしょう。母犬の何らかの明らかな感染(例えば、毒素を生み出す細菌由来)も一胎児のうちほとんどに影響を及ぼすことになります。

 オリジナルのサイトはこちらです。新生児脳症に冒された子犬のビデオがあります。(右側にある画像をクリック)ビデオで、奥にいるクリームの子犬がそれで、他の子犬に比べて明らかに小さく、動きがぎこちなく、立ち上がることができません。

 このページは、ラボ担当者のご好意により日本語訳をしています。無断転載、流用はお断りいたします。

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新生児脳症のDNAテスト

 新生児脳症のDNAテストは従来は血液サンプル(5〜10ccの全血)を直接ミズーリのラボに送っていましたが、2008年7月21日より血液サンプルではなく、チークスワブでの検体提出が可能になりました。これはOFAとのタイアップでオンラインで直接OFAにオーダーをすることになり、検体の採取・送付が簡単になりました。送付は通常の郵便で大丈夫です。
 検査料金は1頭につき65米ドル。支払いはクレジットカードです。65ドルには、OFAのデータベースに検査結果を登録する費用(通常1件につき15ドル)も含まれます。

注1:以前は、単に新生児脳症(Neonatal Encephalopathy)となっていたため、略称は NE でした。その後、発作を伴う(with Seisures)と名称が変更になったため、現在は略称が NEwS と表記されるようになっています。過去のNE=現在のNEwS です。

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