PRA の DNA テストについて

 アメリカの Optigen によって、prcd(progressive rod-cone degeneration=進行性網膜桿状体-錐状体異形成タイプ)が関与するPRA の DNA 検査(遺伝子レベルでの確定診断)が可能になりました。今まではスタンダード・プードルについては検査を受けていませんでしたが、現在はスタンダード・プードルの prcd-PRA検査も受け付けています。
 また、スタンダード・プードルにおいては新たに rcd4-PRAのDNA検査が開発されています。

 テストの結果は、以下の3つに分けられます。

Normal/Clear:ノーマル/クリア prcd-PRAには冒されておらず、発症遺伝子はもっていません
Carrier:キャリア prcd-PRAは発症しませんが、その病気の遺伝子を持っています
Affected:アフェクティッド prcd-PRAを発症する個体

 以前、OptiGenによるテストは「マーカーテスト」だったため診断結果にはわずかながら誤差があり「ノーマル/クリア」(以前は、パターンAという言い方でした)以外は100%確定の診断ではありませんでした。しかし、その後の研究でprcd-PRAを発症させる遺伝子そのものが発見されたため、2005年よりダイレクトの確定診断が出るようになりました。


診断結果とブリーディング・プラン


 ノーマル/クリアはprcd-PRA が発症する恐れも、次世代の犬にこの病気を引き渡す可能性もありませんので、どの診断結果の犬にも交配が可能となります。
 キャリア及びアフェクティッドの犬は、必ずクリアの犬とのみ交配するべきで、この交配により生まれた仔犬達は、彼らがブリーディングプログラムに使われる前にDNA テストを行って判定を受けるべきです。(ただし、よほどのことがない限り、アフェクティッドの個体を繁殖することはおすすめできません)

<重要!>注意すべきこと


 プードルの PRA のタイプは、実は二つあります。
 OptiGen で血液サンプルによる DNA テストが実施できるようになったのは、prcd-PRA と言われるタイプの PRA で、これはプードルにおいて発症する全 PRAのうち75%、あるいはそれ以上がこのタイプのものであろうと言われています。この DNA マーカーテストで「ノーマル」と判定されたとしても、もう一つのタイプの PRA に冒されている可能性が捨てきれません。「もう一つのタイプの PRA がある」ということはわかっていますが、そのもう一つのタイプは、未だ具体的に解明されていないことを付け加えておきます。
 また、プードルの眼疾患は、PRA だけではありません。例え prcd-PRA がノーマルであっても、繁殖に使う犬達は、やはり定期的に眼科専門医による診断を受けて網膜に変性が見られないか、他に遺伝的な眼疾患の問題がないかどうかをチェックする必要があります。

 プードルにおいて PRA の発症は比較的遅いとされており、6歳以降、つまり多くの場合が繁殖をすでに経験、あるいは終えている年代で病気が発現するケースが多いとされています。それゆえに早い時期にノーマルか、あるいはキャリア、アフェクティッドかを知ることができるのは将来のブリーディングプラン及び、prcd-PRA をブリーディングラインから排除するのに非常に役立ちます。
 また、発症が比較的遅いと言われていながら、2歳前に眼底検査でPRAの兆候が見られるケースもありますので、繁殖を考えているのであれば早い時期での検査をおすすめします。

 なお、ERGによる臨床では、PRA などの眼科疾患が「発現しない限り」診断がつきませんし、この手法では「キャリアの診断はできません」。つまり、若いうちは網膜に特に異常もみられず「正常」であると診断されながら、その後発病するケースは十分あり得ますし、また「正常」と診断されていた犬が実際は「遺伝子レベルにおいてはキャリア」である可能性も十分あります。DNA テストにおいて特筆すべき点は、こうした「あいまいな部分」が明確になることと、年齢に関わりなく発病前に診断が可能であるということでしょう。ただし、繰り返しますが、今回可能になった診断はあくま でも prcd-PRA においてのみであり、他のタイプの PRA及び、他の遺伝性眼疾患については引き続き専門医による眼科診断が必要です。特に、prcd-PRA DNA テストにおいてはノーマルの判定であっても、近い血縁の犬が PRA を発症した場合は、別のタイプの PRA に冒されている可能性が高いので、近親の犬も含めての眼科検診がブリーディングプランを立てる上で必要になります。


DNAテストの受け方

 PRAの遺伝子検査はアメリカ OptiGen社が特許を持っています。日本の会社でも検査ができるとしている所がありますが、検査結果の精度を考えると、OptiGen社からのライセンスを受けているラボが一番信頼できるかと思います。
 
正式ライセンスで検査をしているかどうかは、OFAサイトで検査ラボの一覧を参照してくださるとよいかと思います。

 2018年時点で、OFAでprcd-PRA 及び prcd-4 PRA の診断結果の登録が可能なラボは以下のとおりです。

 prcd-PRA(全てのバラエティのプードルが対象)
  Optigen
  Genetic Technologies (Australia)
  Helica (Mexico)
  Paw Print Genetics

 rcd4(ミニチュア&スタンダードプードル)
  Optigen
  Eurovetgene(スロベニア)
  OFA/University of Missouri
  Orivet(オーストラリア)
  Laboklin(ドイツ)

 アメリカの本家、OptiGen 社は、以前は血液サンプルのみの受付でしたが、現在はチーク・スワブでの検体受付を開始しています。
 血液送付によるテストでは、採血や動物検疫事務所での輸出検疫手続、送付時期の気候的な問題など煩雑でしたが、チーク・スワブによる口腔内細胞採取では日本での動物検疫書類を取る必要もなくなり、送付方法は血液送付に比べて遥かに楽になりました。送付にかかる時間や気温の心配もなく、数が少なければ封書での送付も可能なため送付コストも今までに比べて格段に軽減されます。(ただ、念のためEMSなどトラッキングが可能な方法での送付が確実でしょう)

 OptiGen でのテスト申し込みなどに関して、有料でお手伝いができますので、直接OptiGen にテストを申し込みたい方は私の方に問いあわせてください。申し込みに関してのやりとりなど手間がかかりますので、その分の手数料は若干いただくことになりますが、ご相談いただければお手伝いいたします。テスト結果は申し込み者にのみ通知されます。

参照:OptiGen サイト(許可済)
このページ及び関連ページの内容の無断転載・流用をお断りします。
2006-4 , 2006-8、2009-10 改訂、追記
2016-7 改訂・追記
2018-10 改訂・追記


遺伝性疾患トップページへ戻るPRA のページへ戻る

Copyright (c) 2000-2018, Phoebe N. Habu, all right reserved.