その名前のとおり血中の血小板が減少する病気です。血小板がなくなってしまうため、出血すると血が止まらなくなり失血死する場合があります。

原   因

 血小板が減少する原因として、書籍などには、ウィルス感染、薬物中毒、白血病、ウィルス感染、また、エストロゲン(未避妊のメス)や自己免疫介在などとされていますが、多くの場合不明とされています。
 ウィルス感染としては、パルボ、ジステンパー、リケッチア、レプトスピラなどが挙げられています。

 薬物及び、ワクチン接種が血小板減少症を誘発するとされていますが、Dr. Feldman によると獣医学分野においてはそれほど多くはなく、不適切もしくは不十分な診断がなされている可能性があるとのことで、薬物やワクチンと血小板減少症の関連は逸話的なものであって、科学的な研究による証明はなされていないとのことです。また、免疫介在性も本当の自己免疫性は少ないとのことです。
 ちなみに、血小板減少症を誘発する薬物としては(人間の場合)抗生物質、抗炎症薬、ジオキシンなどの心臓薬、利尿剤があります。
 他に血小板減少症を引き起こす要因として、リンパ系腫瘍があります。
 甲状腺機能障害と血小板減少症については学術的裏付けはないとのことです。(Dr. Bernard Feldman)

症   状

 血小板数が30,000を切ると臨床兆候=粘膜や皮膚の点状出血、鼻出血、歯肉出血が表れます。腸管出血を起こした場合真っ黒な血便となります。(鮮血の場合は粘膜出血)急速に発病した場合、血小板数は高くても臨床兆候をみることがあるので注意が必要とされます。(点状出血の写真)

治  療

 出血がみられる場合、安静が必要で、ステロイド療法(副腎皮質ホルモン剤の投与)が最も一般的に行われます。
 一部書籍や文献には、血小板増加を促すためにビンクリスチンの投与(静脈注射)について書かれていますが、使用には注意が必要であり、その効果については一時的なものとの報告があります。
 同じく治療法として脾臓摘出と書いてあるものもありますが、脾腫はまれであり、脾機能亢進症でない限り脾臓を摘出しても再発防止の効果はないとされます。
 予後については、免疫介在性の場合、その犬の生涯にわたって薬剤による維持が必要とされています。
 いずれにしても早期発見、早期治療が命を救えるかどうかの鍵となります。口腔粘膜部や皮膚に出血性の異常が見られた場合は早急に獣医師の診断と適切な処置を受けることがもっとも重要です。

病気の発症と遺伝的な関わり(疑問)

 この病気について「白い犬に多い」ということは、一般の獣医師の口からよく聞く言葉でした。しかしながら、私ができる範囲で調べた限りにおいて、遺伝的要素、特に「毛色の白い犬との関連性」に関する文献は今のところ全く見当りません。唯一「最新 犬のお医者さん」という本に『日本では、マルチーズに遺伝的と思われる突発性血小板減少性紫斑病がみられます』という記述があるだけですが、これについても私ができる範囲でインターネットなどで調べた結果、マルチーズと血小板減少症を結びつけるものは見つかりませんでした。血液学の専門家である Dr. Feldman にこの点について尋ねたところ、彼自身も白い犬とこの病気の関連性ということについては聞いたことがないという話です。
 これは私個人の考えですが、おそらく毛色が白い、あるいは白に近く明るい場合、血小板減少症の初期症状=皮膚の点状出血が容易に発見できるため、早期発見で病院に運ばれるケースが多いのではないか、と素人考えで想像しています。それに反して、黒い毛色の犬で、特に皮膚も黒っぽい場合は初期症状が発見しづらく案外この病気に気づかないうちに犬が亡くなっているケースもあるのではないか、と。白い犬がこの病気になった時に容易に発見できる=発見件数が多いために、結果として白い犬に多いという印象が一般の開業医にあるのではないか、というのが今の素人なりの私の考えなのですが。
 遺伝的要因、家族性についても同じく Dr. Feldman に尋ねたのですが、これに関しても特に遺伝性を示唆する要因は考えにくいとのことでした。友人のスタンダードのケースも話をしたのですが、もしもこの病気に遺伝的要因があるとしたら、もっと犬が若い段階で発現するはずで、中年以降、それも10歳という年齢を考えると遺伝性疾患とは言い難いであろうというのがDr. Fledman の意見です。

 この病気と遺伝的な関わり、犬種特異性など、もし何かご存知の方、文献をお持ちの方がいましたら個人的に興味がありますので是非ご連絡ください。

菜々子のケース

 2000年6月、菜々子がこの血小板減少症になりました。次ページでその経過についてご紹介します。

2001-6


参考文献:
The Poodle Owner's Medical Manual/Robert M. Brown, D.V.M., (c) 1987 by Breed Manual Publications, Ltd.
最新 犬のお医者さん 1995/主婦と生活社発行
臨床病理学セミナーハンドアウト Dr. Bernard Feldman, (c) 2001 社団法人日本動物病院福祉協会
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