Sebaceous Adenitis
sa affected SP
 SA はここ数年、アメリカで大変問題になっている遺伝性皮膚疾患です。
 以下の文書と写真、図版は、VIP 及び GDC の好意と許可により和訳して転載するもので、無断転載を禁じます

 SA(脂腺炎)は、若い犬に頻繁にみられる皮膚疾患です。発症の原因は現時点で不明ですが、脂腺が炎症を起こし、ついには失われ、被毛も抜け落ちてしまいます。

 脂腺炎は、アキタ、コリー、ダルメシアン、ダックスフンド、ジャーマン・シェパード、ゴールデン・レトリバー、アイリッシュ・セッター、ラサ・アプソ、マルチーズ、ミニチュア・ピンシャー、オールド・イングリッシュ・シープドッグ、プードル(トイ、ミニチュア、スタンダード)、サモエド、スプリンガー・スパニエル、セント・バーナード、ビズラ、ワイマラナー、そしてミックス犬にもみられています。

<注>ここの文献の多くはVIP、GDCの好意により転載した記事ですが、すでに情報が古くなっている部分もあります。次ページ以下で、なるべく最新の情報を追記していく予定です。

SA を発症するとどんな風になるのでしょうか?

 SA の状態を文章で説明するのは困難です。まず、犬種によって状態が違ってあらわれることと、飼い主が選択肢の一つとして安楽死を考えてもおかしくないほど非常に重度の病変がみとめられるものから、外見上は病変がみられない軽いケースまで、その様子には幅があるからです。また、診断には顕微鏡下による皮膚生検が必要となります。このように SA の病変にはかなりの幅があるのですが、共通しているのはどの場合でも過剰なフケ(鱗屑)、もしくは脱毛がみとめられることです。

 スタンダード・プードルにおいては、鱗屑は時に銀白色で毛幹に密着していたりします。重い脂腺炎に冒された犬の場合、脱毛と鱗屑が悪化するケースがあり、その場合は強い臭みを伴って二次的に皮膚感染が起きる場合もあります。

 潜在性の SA に冒されたスタンダード・プードルには外見上、この障害が現れません。それゆえ、正常に見えるスタンダード・プードルであっても SA のテストをすることは重要なのです。

 アキタにみられる SA は、スタンダード・プードルの場合と似ていますが体重の減少や発熱といった全身性疾患としてあらわれることが普通のようです。ビズラでは、病変は頭にあらわれることが多く、鱗屑よりも脱毛の方がより顕著です。多くの犬種では、頭、マズル、耳といった部位が最初に冒されるのですが、ジャーマン・シェパードでは腰の部分から病変が始まってその後、頭部にみられるようです。

SA の診断

 SA は甲状腺機能低下症やアレルギーといった他の病気と似て見えるため、その診断には獣医病理医によって、顕微鏡下で生検サンプルを用いた診断が必要になります。診断の手順は安全で犬にとってはほとんど不快ではありません。獣医師は基本的に病気に冒された部位の毛を剃るでしょう。病気の疑いがあるかどうかのチェックや登録のために検査をする場合は、頭頂部からキ甲部の間の背側の皮膚を採取します。生検のために皮膚組織を採取した場所をこすったり揉んだりしてはいけません。皮膚組織を採取するのにリドカインといった局所麻酔をすることもあります。麻酔で感覚が鈍ったところで6mm のベイカー・バイオプシー・パンチを使って組織の小片を取りだします。生検組織は舌圧子にそっと貼り付けてホルマリンに浸け、病理医の元に送られます。

 SA の診断と登録は2002年夏まではGDCで行われていましたが、現在はOFAにおいて行われています。OFA が認める獣医病理医のリストは、「SA の診断と登録手順」のページにありますので、参照してください。

左図で、犬の背中側のうち、白く示された部分をパンチします。

 犬が非常に凶暴でない限り、診断手順において全身麻酔を用いる必要はありません。

SA に冒された犬のケア

 現在、SA の治療法はありません。この病気は周期的に繰り返すようです。つまり、一度脱毛し、その後毛が生えてきてまた脱毛する。そしてまた毛が甦る、といった具合です。一旦脱毛した後に再び生えてくるその毛は、以前とは毛質が異なっていることが普通です。二次的な皮膚感染予防のために抗生物質は欠かせません。ビズラは例外ですが、アキュテイン(アメリカの治療薬の名前)といったレチノイドのSA に対する効果については、大いなる疑問があります。

 SA に冒された犬の見栄えを良くし、かつ、犬も快適にすごせるようにするには、低アレルギー性のドッグ・シャンプーを使って頻繁に(当初のうちは毎週)お風呂に入れ、鱗屑や死毛を除いてやることがベストでしょう。

 オイル・バスはSA に冒されたスタンダード・プードルでは効果をもたらしています。手ごろな価格で無香料のベビー・オイルかバス・オイルをお湯と半々にして混ぜ、犬の体にかけて十分にしみ込ませるように、やさしくマッサージをします。そのまま一時間ほどそのオイル水をつけたままにしておきます。そしてシャンプーを使ってオイルを全て洗い落とします。洗い落とす時、お湯は流れ落ちる鱗屑でグレーになっていることでしょう。良質の犬用クリームリンスで仕上げをします。
 (手軽なオイル・バス法として、ベビーオイルとお湯を混ぜたものをスプレーガンに入れ、全身に吹きつけてマッサージするという方法もあります。)

 オイル・バスで毛の再生に大きな効果をあげる犬もいるでしょうが、残念ながら全ての犬が同じ結果になるとは限りません。けれど、こうしてお風呂に入れてオイルすることによって、皮脂腺が失われることによって荒れてしまった犬の皮膚をなめらかにする効果があります。

 SA は美容・外見上の問題です。SA にかかってもほとんどの犬はハッピーで、健康で、この病気にかかる以前と同じように飼い主の愛情とケアが必要なのです。

次ページへ遺伝性疾患トップページへ戻る

Copyright (c) 2000-2009, Phoebe N. Habu, all right reserved.