スタンダード・プードルとは、どのような犬なのでしょうか? |
プードルのバラエティの中で最も犬種としての歴史が古いスタンダード・プードルは、もともとは水辺の猟の際に撃った鳥を泳いで取ってくる「回収犬」として使われていたという歴史があります。現在ではスポーティング・ブリード(鳥猟犬)という位置付けはされていませんが、なるほどレトリバーだ、という潜在能力の高さが顕著にみられます。タイトルにしたように、スタンダード・プードルはその名前のとおり、プードルという犬種の「標準」的な存在でもあります。 性格としては、トイ、ミニチュアに比べておおらかなところはありますが、体は大きくてもプードルらしい繊細さ、デリケートさ、神経の細かさをいい意味でもっています。非常に頭も良く、能力の高い犬種で、カナダ、アメリカ、ニュージーランドでは盲導犬として使われているものもおり、まさに「才色兼備」という言葉がもっとも似合う犬のひとつです。 この数年「スタンダード・プードル」が欲しいという人が増えました。スタンダードは美しい上に、優雅で連れて歩いても目立つ犬です。しかし、どんな犬でも100%良いことばかりではありません。実際にスタンダードは手入れ、しつけ、運動、かなり大変な部分が多くあります。 ◆スタンダード・プードルと暮らす上での関門・注意 手入れの大変さ プードルの毛は一生伸びます。また、ほうっておくと非常にからみやすいため、日常的な手入れが欠かせず、少なくとも1カ月に1度は風呂に入れ、トリミングをする必要があります。 以上は、ペットカットでの話で、これがショーコート、もしくはショーコート並に毛を伸ばしておくと更に大変になります。特に生後6,7ヶ月頃からアンダーコートが増えますので、あっと言う間に絡むようになります。手入れができずに毛玉だらけにすることは、手入れをされる犬にとっても負担になることをお忘れなく。 日常の運動管理・しつけの問題 スタンダード・プードルは、非常に活動的で活発な犬です。もともとがレトリバーであり、ノン・スポーティングというカテゴリーはあわないのではないかと言う人がいるほど、非常にスポーティングな要素を持ちあわせた犬です。 よく、庭があるから多少大きな犬でも運動は大丈夫という人がいますが、犬をただ庭に放しておいただけでは何も運動になりません。それどころか外にほうっておくと退屈しのぎに穴堀をしたり、通りすがりの犬や猫、果ては人にまで吠えたりと、余計な問題を起こしかねないのです。 大型のスタンダードは、特にしつけが大切です。ある程度しっかりとした社会マナーを身につけさせないと体が大きい分他にかけるかもしれない迷惑の度合が小型犬の比ではありません。小型犬では大丈夫なことが、体格の大きな犬では、場合によっては大変な結果を招きます。もともと頭のよい犬ですから訓練など物覚えは非常によいのですが、しっかりとしたリーダーシップが発揮できないと、いいようにあなたが犬に扱われるおそれもあります。小型犬と違って力も強い分、きちんと扱いきれない場合大変です。 自分できちんとしつけをし(犬のしつけは、飼い主の努力が必要です)なおかつしっかりと日常管理をして取り扱う自信があるかどうかをよく考えてください。お行儀のよい、頭のよい、素晴しいスタンダードにあこがれるのであれば、それは飼い主のあなたが日々努力をしなければならないということです。どんな犬でもただ黙ってほうっておけばみんな良い子に育つ、というのは単なる幻想だ、ということを肝に命じてほしいと思います。 運動・生活の中でのしつけのヒント 家の中で飼ってください 今でも体の大きな犬=外で飼う、という人が少なからずいます。しかし、スタンダード・プードルは外飼いには全く向いていません。外に置いておいたら、あの毛はすぐに汚れをまとい、それが原因でまたたく間に毛玉をつくったりしてしまいます。また、プードルという犬は人と一緒に過ごすことを非常に求める犬種で、彼らにとってたった一人ぼっちで家族から隔離されて外に置かれることは非常に苦痛です。家の中で飼うことがベストですので、外飼いを考えている、あるいはしている方は犬のためにも是非考え直してほしいと感じます。 ◆日常管理・取扱・運動上の注意 体は大きくても、よくも悪くも「プードル」です。非常に細やかでデリケートな神経と感情を持っています。叩いたり苦痛を与えるような方法でトレーニングすることは、この犬種の良さを潰しかねません。また、先にも書きましたように訓練所などの預託も決してプードルという犬種に適した方法だとは思えません。特にスタンダードは非常に頭が良く、ひどい扱いをされたりイヤな出来事はこちらが驚くほど長く覚えています。体は大きくても手荒な扱いはしないでください。彼らは納得のいかないことで、納得のいかない方法で叱られたり不当な罰を与えられると傷つきます。人の感情に関しても非常に敏感で、飼い主が精神不安定であれば、犬も精神不安定になります。 |
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活発で体が大きい分動きも大きく、時に激しくなりますので骨格の問題や怪我にも注意が必要です。普段は多少のことには(トイに比べて)おっとりしている面もあるスタンダードですが、時にうれしくて興奮すると飛びます。伸び切ったゴムがプツッと勢いよく切れたような勢いで、文字通り「跳ぶ」のです。これは家の中だろうが外だろうが、狭かろうが広かろうが、回りに何があろうが、感情が一気に爆発するかのように、所かまわず瞬間的に跳ねてしまいます。気をつけないとこれで怪我をします。興奮してバタバタしている子を押さえようと足をつかんで、折ってしまったというケースもあります。 飛び跳ね方に特徴があります。人に飛びつこうとした時などによくみられるのが垂直に後ろ足だけでタテにピョンピョン跳ねる場合。もう一つは4本足をほぼ揃えたまま垂直方向に跳び上がる場合があります。 右の写真は、その典型的な跳び方の例です。ほぼ四つ足を揃えて垂直に、そして横方向に飛び跳ねています。 |
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詳しくは遺伝性疾患のページを参照していただきたいのですが、股関節などは例え繁殖をしなくてもチェックすることを強くおすすめします。(繁殖を考えている場合は必須です!)特にボール投げ、アジリティ、フリスビーなど、ある程度活発な活動をしたい場合は最低限、股関節だけでもチェックしてください。股関節が悪いのにそれを確認せずにバンバン激しい運動をさせてしまって、中高齢になってから足腰がガタガタになってしまっては遅いのです。 ◆スタンダード・プードルと暮らしたいあなたへ スタンダード・プードルは、オシャレで連れて歩くと目立つのですが、きれいにきちんと飼おうと思うと手入れ、日常管理、しつけなど、飼い主側にそれ相当の努力が求められます。体が大きい分エサ代、薬代などの諸経費も小型犬よりかかります。非常に活発なだけにそれなりの運動量も確保してやらねばなりません。ただ見た目だけで簡単に欲しいと思って気軽に飼ってなんとかなる犬種ではないことも多い、ということを覚えておいてください。 まずは、プードルという犬種がどういう犬かを知ってください。大型犬を飼った経験があるから大丈夫だ、と考えたとしても、犬種が違えば気質、性格、行動、活動性が違ったりするものです。プードルにつきまとう手入れの手間はもちろん、その性格、気質、行動的特質などがあなた自身や家族の性格、生活のペースや生活環境とあうかどうかをよく考えてください。できるだけ多くのスタンダードの飼い主から実際の様子の話を聞いてよく考えてください。インターネットのサイトなどを見た時に、あの人のあの家庭で大丈夫なのだからうちも、、、と安易に考えないでください。同じ犬種でも個々で性格や気質の違いの多少があり、飼われている環境も飼い主の性格も、生活ペースもおそらくは、全てあなたと違うのです。これは当たり前のことです。○○さんがあぁやって飼っていられるのだから、うちも、、、と気軽に同じように考えて、もしその思った通りにならなかったら?考えすぎと言われるかもしれませんが、それくらい慎重になってもいいのではないでしょうか。 そして仔犬を手に入れる時は、くれぐれも衝動買いはしないでください。スタンダード・プードルは、過去は日本でとても少ない犬種でしたが、今は探せば必ず手に入ります。できるだけリサーチをして、ブリーダーを選び、最低限母犬だけでも見てください。その上で明るく聡明で健康で「プードル」としてのいい気質をそなえた犬を迎えてほしいと思います。 スタンダード・プードルは、本当に犬のこと、この犬種のことを理解して、責任をもってきちんと飼える人に飼ってほしいと思っています。間違っても「流行犬」には絶対にならないでもらいたいものです。「流行犬」になると、生ませればお金になるので見た目さえその犬種であれば何でもいいというような無責任な大量繁殖(増殖)がされ、犬の質が(心身ともに)悪くなります。この「心身とも」というのは、気質・性格、そして遺伝性疾患も含む健康上の問題です。 一緒に暮らし始めた犬と生涯楽しく過ごせるか、あるいはその犬が死ぬまで苦痛に感じるかはひとえに飼い主にかかっています。プードル、それもスタンダードは本当に素晴らしい犬種です。うるさく私がここまで書いてしまうのは、そんな愛すべきスタンダード・プードルには不幸な生涯を送ってもらいたくないという思いがあるということをご理解いただければ幸いです。 昨今は、非常に気軽にインターネット通販などで犬を飼う人も多くいます。たかが犬。しかし、真剣に向き合おうと思うと半端な気持ちではいられないはずです。犬種を問わず、私たちは犬という命ある素晴らしい動物と暮らす時には彼らに対するあらゆる責任を負い、お互いに幸せに暮らすためにあらゆる努力を惜しまないくらいの覚悟が必要と感じます。 (05-1999,revised 06-2004) |
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